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力学の応用で「動脈瘤」を発見する

特殊なゴムを材料にして、3Dプリンターで作成した「模擬血管」の中を、血液を模擬した液体が、心臓の拍動を模擬した圧力で流れていきます。模擬血管の上流側と下流側には圧力センサーが取り付けられていて、模擬血管の前後の「血圧」を測定しています。
この模擬血管には「動脈瘤」が再現されていて、測定した圧力変化を動脈瘤のない模擬血管の結果と比較することで、動脈瘤がある場合の圧力変化の特徴を調べることができます。
これは機械工学科の研究室での実験ですが、機械工学がエンジンや構造材料を取り扱う学問だというイメージがある人には、意外に思えるかもしれません。しかし、血管内の血液の流れを理解するためには流体力学が必要です。また、心拍に合わせて血管が変形しますが、その理解には機械力学の視点が必要です。

この方法では動脈硬化の検出も可能ですが、血管が硬くなることによる影響は材料力学が応用できます。「4力(よんりき)」と呼ばれる材料力学、流体力学、熱力学、機械力学は機械工学の基本ツールですが、その応用範囲はエンジンなどの「機械」だけではなく、動脈瘤などの生体にも適用できるのです。
この方法を利用すれば、体の複数か所で血圧を測定することで、動脈瘤の有無や体のどのエリアに動脈瘤があるのかを簡易的に判断できるようになります。 血圧測定による動脈瘤や動脈硬化の簡易診断が、健康診断の診断項目に入る日は遠くないかもしれません。

ダメージを正しく測定して、未来を予測する

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動脈瘤のある血管や動脈硬化を起こしている血管は、心拍による変形で徐々に「疲労」していきます。 原理は違いますが金属にも似た現象が起こり、「金属疲労」と呼ばれています。
金属疲労は、長時間にわたり金属に繰り返し力が加えられることにより、金属材料の強度が低下してき裂や破断を起こすなどの現象です。航空機などで発生すると大事故につながります。
金属疲労などによって、材料がどのような状態にあるのか、どのくらいのダメージを受けているのかといった状態や性能を評価することは、私たちが安全で安心な生活を送るためには不可欠の技術といえます。
また、近年、水素がクリーンエネルギーとして注目を集めています。その一方で、水素が金属を脆くする「水素脆化(すいそぜいか)」という現象が知られています。 水素ステーションや燃料電池自動車の水素タンクは金属製ですが、水素脆化への対応は安全な水素社会を構築するための大きな課題になっています。

機械工学科では、金属疲労や水素脆化についての研究も行っています。
従来の研究では、その材料がどのような環境に、どのくらい曝されていたのかという前歴情報から、金属が受けたダメージを推定して、破壊を予測していました。
しかし、破壊のメカニズムを詳細に理解することができれば、前歴情報がなくても、いつ破壊するかを予測することが可能になります。
金属などの破壊のメカニズムを理解し、ダメージを正確に評価して、精度の高い故障予知ができる技術の確立は、安心で安全な社会の実現にはなくてはならない技術です。

「設計者」を目指してほしい

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動脈瘤検知の研究例からも、機械工学がさまざまな分野で活用されている学問であることが分かると思います。 では、どのような人が機械工学を学ぶべきなのでしょうか。本学では「設計者」を目指す人に機械工学を学んでほしいと考えています。
「設計者」とは、機械の図面を作成する人という意味ではありません。
「設計者」とは、図面に書かれた寸法の意味を説明できたり、手順書を正しく理解できたりするだけでなく、物事の本質を捉え、自分自身で問題解決の糸口を掴むことができる人のことです。
設計者が活躍できる場は、モノづくりの現場だけでなく、メンテナンスやリユース、リペアなど、時代の変化に合わせて、ますます広がっています。また、機械工学という学問も、常に変化を続けています。以前は、コンピュータ制御の工作機械は存在しませんでした。最近は、3Dプリンターが日常的に活用されています。AIを設計や解析に利用する研究も進んでいます。

4年間の学びを通して身につけた、データから仮説を立て、シミュレーションを行い、実験で検証するというプロセスは、研究だけでなく、実社会のさまざまなシーンで必ず役に立ちます。
いろいろなことに興味を持ち、さまざまなチャレンジを楽しむことができる4年間を、機械工学科で過ごしてみませんか。